やがて、試合時間が来た。

リング上、龍太郎と拓斗が向き合う。

同じ空手着、同じ黒帯。

しかしその空手着のくたびれ具合も、黒帯のほつれ具合も、微妙に違う。

両者の修行の内容、苛烈さを、空手着が表している。

どちらの空手着の傷み具合も甲乙付け難し。

ならばどちらが勝っているのかは、やはり拳を交えなければ分からない。

「……」

先程から落ち着かない拓斗。

心臓がバクバクいっている。

そんな彼に。

「緊張してるか?」

目の前の龍太郎が問いかける。

「う、うんっ」

上擦った声で返答する拓斗。

ニッと笑った後。

「俺もだ」

龍太郎は頷いた。

「いいか?それでは始めるぞ」

寒緋が両者の会話を遮る。

「それでは勝負…はじめっ!」