「ブルってんのか?拓斗」

隣に立っていた龍太郎の言葉に、拓斗はハッとする。

「だったら帰れ。ここは本気で勝ちてぇ奴だけが上がるリングだ…やる前からビビる奴は立ってちゃいけねぇ」

「……」

グッと。

拓斗は奥歯を噛み締める。

客席で龍娘が、花音が見ている。

きっとパリの空から、兄とその伴侶も応援してくれている。

みっともない姿だけは、見せられない!

「……それでいい」

それでこそ俺と切磋琢磨してきた男だと。

龍太郎は誇らしげに笑みを浮かべる。