『まさしく千招有るを怖れず、一招熟するを怖れよ、だ』

龍娘が言う。

『何が体格だ、何が臥龍だ、そんなものなくとも李 書文は中国武術界に語り継がれる拳聖だ。何より…』

彼女は大きく息を吸った。

『私とて体格も恵まれていないし、臥龍も持っておらんわ』

「!!」

その言葉で、ガツンと頭を殴られたような衝撃を受けた。

そうだ。

龍太郎の老師でもある龍娘もまた、拓斗と同じく努力のみで武闘派教師陣の筆頭とまで言われる実力を身につけたのだ。

しかも拓斗と違い、非力な女の身で…。

『いいか橘…私の腹が大きくなる前に、お前には李 書文と私の得意とする猛虎硬爬山を伝授してやる。二の打ち要らず、一つあれば事足りる…丹下が臥龍の力など使う暇もなく叩きのめせるようにな』