だがそんな中でも、皆が皆眠っている訳ではない。

日本庭園を見る事の出来る、板張りの長い廊下の一角。

グレーのスウェット姿の誠一郎が、柱に凭れ掛かって座っていた。

5月とはいえ、夜ともなれば少し肌寒さを感じる。

それでも羽織るものもなく、ただボンヤリと。

夜気に冷やされた廊下に座り込んでいる。

長い前髪に隠れた視線は、どこを彷徨うのか。

ただ見上げる角度から、夜空を見ているように思えた。