<まぁ無理だろうね>

龍太郎がゆっくりと立ち上がるのを見ながら、クロラが呟く。

<奴は魔法に関しては全くの素人だ。ましてや時間魔法なんて高度な術式が理解できる筈もない>

このまま一方的に、時間を止めてその隙に手も足も出ない龍太郎を切り刻めば、無傷での勝利も可能だった。

だが。

「無駄だぜ先輩」

レッドは言う。

「どんなに目を凝らした所で、俺の動きは見えねぇよ…動きが速いんじゃなくて、魔法で時間を止めてその隙に攻撃してんだからな」

<馬鹿…甘ちゃんだよ本当に…>

クロラの呆れる声が聞こえた。