「あ」

下校中。

愛のスマホが着信する。

アルベルトからだ。

「もしもし?」

『やぁ、僕だよ愛。龍太郎には伝言伝えてくれたかい?』

「はい…帳さんに会いに行くように伝えました…でも…」

少し心配そうな顔をする愛。

「大丈夫でしょうか、帳さんのお家って確か…」

『ああ、タライ舟で鬼神島まで数時間って聞いてるよ、この時期は波も荒いんだってね』

笑いながらシレッと言うアルベルト。

この人時々悪魔のようだなと、愛は少し苦笑い。

『ちょうどいいじゃないか』

アルベルトは続ける。

『タライ舟みたいな不安定な乗り物なら、バランス感覚も鍛え直せる…そんな乗り物で数時間も漕ぎ続ければ、精神力を極限まで削られても耐え抜ける強さも鍛えられる…龍太郎が臥龍を使役したいというのなら』

電話の向こうのアルベルトの声は、期待に満ちていた。

『龍太郎自身も人間を超越しなきゃ駄目だ』