脇目も振らずに廊下を歩く誠一郎。

人混みをすり抜けながら、ゆっくりとした歩調で進む。

それ程テキパキした動きではなく、寧ろ緩慢なゆったりとした歩みなのに、どうしてこの人混みをスムーズに進めるのだろう。

リグニアなど、人にぶつからずに進むので精一杯なのに。

それが、『無意識の内に誠一郎の背後の影を周囲が恐れて避けている』という事に気付くのは後になってだが。

廊下の突き当たりを曲がり、階段を下る。

それを追うリグニア。

昼休みでありながら、誠一郎は人の少ない場所へと向かっていた。