「うわ…」

阿行が思わず声を上げ、渉の背中にしがみ付いた。

その拍子にアルカディアが強く押し付けられる形になるが、それが気にならないほどに渉も緊張している。

「阿行さんにも視(み)えましたか?」

「危ないよー…あの人…」

渉の黒マントを握り締める阿行。

彼女は怪異な分、渉以上に『あれ』の危険性が理解できているのかもしれない。