「吉野ちゃん、そろそろ綻び始めたねー」

放課後。

校庭を通過していた遊里が、隅に植えてあるソメイヨシノを見上げながら呟く。

「おい小猿、何で『吉野ちゃん』なんて呼ぶんだ?只の桜の木だろうがよ」

鷹雅がハテナ?と首をかしげた。

「遊里ちゃんは、桜の木のお友達がいるんだぴょん」

共に下校していた花音が言う。

花音が言っているのは、正確には佐倉の眷属の一人、吉野の事だ。

昨年の体育祭で知り合った、幼子のような純粋無垢な少女だ。