「よし、やめ」

龍娘の声で、拓斗は立禅の姿勢を解く。

「今日の朝稽古はこれにて終わる」

「有り難うございました、老師」

礼をする拓斗。

いつもなら龍太郎と並んで言っていた言葉だが、今日からは拓斗一人だ。

…別に龍太郎は、龍娘や拓斗と袂を分かった訳ではない。

今でもお互いに切磋琢磨している。

が、龍太郎はアルベルトに、拓斗は龍娘に師事という形になった。

いわば『龍娘流』と『アルベルト流』、同門でありながら流派が変わったという感じか。

その事が、やや寂しくもあり、ライバル心を煽るようでもある。