タフネスを誇る龍太郎も、こればかりは耐えられない。

糸が切れたマリオネットのように、くたり、とその場に崩れ落ちる。

「龍太郎先輩!」

声を上げる愛。

「大丈夫、気絶させただけだよ」

アルベルトはそう言って、また眼鏡をかけ直す。

…龍太郎はここ最近、悔しいと思う事がなかったのではないだろうか。

天神学園でその実力を認められ、一目置かれるようになり、努力は続けていただろうが、入学したばかりの頃のような強さに対する渇望や、実力差に対する悔しさ、強さへの貪欲さが薄れていたのではなかろうか。

龍太郎の強さの源はそこ。

どんな相手にも食らいつく、相手の方が強いと認めた上で、それでも尚諦めずに向かっていくハングリーさではないだろうか。

登り詰めていく精神を忘れてしまっては、彼はそこで止まってしまう。