佳人な先生

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 安里 匡 視点
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「兄は彼女を
 愛していなかった。

 兄を手に入れたい
 一心だった彼女も
 結婚を節目に
 気づき始めた。

 兄の幸せな家庭を
 作ろうとしてくれている
 気持ち。

 愛してくれようと
 してくれている気持ち。

 そして・・・
 未だに愛されていないと
 いうことに・・・。

 そんな彼女に限界がきた。

 兄の病気がわかる前に
 別居・・・。

 そして病気がわかって
 僕が彼女に知らせたけれど
 彼女は兄の前には
 現れなかった。

 そして兄が亡くなる
 3ヶ月前。
 もう一度僕は連絡した。
 
 最後に会ってあげて欲しいと。

 ・・・彼女はやってきた。
 離婚届を持って――。

 
 彼女は
 このまま妻でいて
 遺産を相続するのは
 違う気がするからと
 離婚届を持ってきたんだ。

 兄は最初は拒否して
 いたんだけど・・・

 最後に彼女が
 私にはもう大切な人が
 別にいるからと
 言ったんだ。

 本当か嘘かはわからない。

 けれどそこまで
 言わせている自分が
 つらかったんだと思う。
 
 兄は離婚届にサインした。

 この2人の人生を
 僕が狂わせたのだと
 つくづく自分を
 責めた・・・。」