アパートに戻ってパソコンを開けるとメールは来てなかった。
「……どうしたんだろう」
 私はやや不安になった。
 昨日のメールを見て何か違う意味に解釈されてしまったかな。

 するとバッグの中の携帯が震えた。
 綾人さんから……直接携帯に電話がくるなんて初めてだった。

「はい」
「僕……今から会えない?琴美のアパートに行っていい?」
「え、今からですか?」
「うん。駄目……?」
「いえ……いいですよ」
「じゃあ……今から行くね」

 彼の仕事はいつも10時頃までその日の営業報告書を作るのにかかっているはずだ。
 今日は早めに仕事をわざわざあげて来てくれようとしているのが分かった。

 私は急いで二人分の夕飯を作った。
 急だったから簡単な煮物と味噌汁だけになってしまった。
 でも……二人で食べられたらいいなって思っていた事が本当に叶うんだって思ったら、やっぱり嬉しくなった。


 8時に彼はやってきた。

「琴美」
 言うなり彼は私を強く抱きしめて、そのまましばらく無言だった。
「綾人さん……上がって。ご飯作ったの、食べてくれる?」
 そう言うと、彼は驚いたような顔で私を見た。
「え、この短い間に?」
「簡単なものしかないけど……二人で手作り食べるの初めてだね」
 嬉しくて私は彼の腕を引っ張ってリビングのテーブルに並べてあるおかずの前に彼を座らせた。

「わ、日本食!夜にちゃんと和食食べるなんていつぶりかな」
「独りでも結構私美味しいって思ってるから、多分二人だとどれだけ美味しいかなって・・・」

 特に彼が訪ねてきてくれた理由は聞かないで、私はすぐにご飯をよそって夕飯をすすめた。
 彼も何も余計な事は言わずにそれを食べてくれて、「美味しい!」を連呼した。

「やっぱ僕、琴美をお嫁さんにする!こんな美味しい料理作れる奥さんの家なら早く帰りたくなるね」

 冗談っぽく綾人さんはそう言って、眩しいぐらいの笑顔を見せてくれた。

「ありがとう。こんなふうに私の手料理を嬉しそうに食べてくれる人がいるといいなあって思ってた……嬉しい」

「琴美」
「ん?」

 箸をを持ったままの私に、テーブルの向かいから彼は突然キスをした。