これから国民に負担を強いる消費税の話し合いをしようという時に、高級腕時計の自慢とは、総理の良識を疑ってしまう。
私は、その事を総理に進言した。
「総理、とてもお似合いですよ♪そのロレックス。
ただ、今は国民に負担をお願いするお立場ですから、会議が終わるまでそれはポケットの中にしまっておいた方が宜しいと思いますよ」
「ん~~そうかなぁ、やっぱりその方が良いかなぁ」
「そうですよ。『そんな余裕があるなら、総理の給料を引き下げろ!』なんて言われるかもしれませんよ?」
「ああ、そうだそうだ!
君の言う通りだ!これはポケットにしまっておこう!」
給料を下げられると聞くと、総理は慌てて時計をスーツのポケットにしまい込んだ。
そして、バツが悪いと思ったのだろう……私と目を合わせるのをやめ、別の人間を捜すようなフリをして、辺りをキョロキョロとし始めた。
すると……
「あっ!幹事長。
なんだ、ちゃんと居るじゃないか」
「えっ?」
総理の言葉に入口の方へ目をやると、確かに幹事長は居た。
「お~~い幹事長、捜していたんだよ!」
総理は幹事長の方へと駆け寄って、何やら話をしていた。
どうやら、最初の予定の通り今日の会議の進行役は幹事長が務めるらしい。
それにしても、どうして幹事長はここに戻って来たのだろう?
「財務省に抗議に行ったんじゃなかったんですか?」
私が幹事長に尋ねると
「行ったさ。行ってしっかり抗議したんだよ」
「それにしては、ずいぶんと早く戻って来ましたね?」
「いやぁ♪よくよく話を聞くと、国の財政もかなり厳しくってだね……」
「アンタたったの5分で丸め込まれたのかっ!」
やはり、財務省恐るべし…………
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