党の会議となれば、党の意見と執行部の意見をすり合わせるのは幹事長の役目と言ってもいい。
幹事長はきっと、それが嫌で逃げたのだろうと私は思った。
そして、幹事長が党本部を出て行ったのとちょうど行き違いに私の所にやって来たのは、総理だった。
「真実君、幹事長の姿を見なかったかね?」
やはり、総理は幹事長を捜しているようだった。
日頃、幹事長はなぜか私のそばに居る事が多いので、総理は私を訪ねて来たのだろう。
しかし、『幹事長はこの会議を取りまとめるのが嫌で逃亡しました』などとは言えないので、私は適当な理由を言ってごまかした。
「幹事長は、何か重要な用事を思い出したとかで先程帰りましたが……」
「ええっ、帰っちゃったの?
……困ったなぁ~彼に進行役をやって貰おうと思っていたのに……」
やはり、総理は幹事長に会議の取りまとめ役をやらせるつもりだったのだ。
しかし残念でした総理、幹事長は逃げましたよ。
「参ったなあ……代役を捜さないと、もう時間もあまり無いしな……」
そう言って、腕時計で時間を確認する総理。
「ほら、十時まであと7分しか無いよ」
そう言って、総理は私の目の前に自分の腕時計の文字盤を、つき出して見せた。
言われなくても、もうすぐ会議の始まる時間である事は私にも分かっている。
一瞬、総理の仕草に妙な違和感を覚えた私だったが、総理の時計を見てその理由はすぐに理解出来た。
「あっ!その時計『ロレックス』じゃないですか!」
私が驚いてみせると
「いやぁ、気が付いたかね♪
これ、私が総理に就任した時に記念に買ったんだよ♪
200万円もしたんだ♪」
総理……アナタ、時計の自慢している場合ですか…………
.



