私は別に探偵では無いが……
私も時々あの場所に携帯を忘れそうになった事があるので、もしかしたらと思った。
「やっぱり……」
総理のロレックスは、トイレの個室のトイレットペーパーを置く棚の上に置いてあった。
おそらく、用を足しながら自分の時計を見てニヤニヤしていたのだろう……
私は、総理のロレックスを持ってロビーへと向かった。
「総理の時計、見つかりましたよ」
「ああっ!それはまさしく私のロレックス!!」
総理はまるで、生き別れになった我が子に再会した父親のように、私に抱き付いてきた。
「ありがとう真実君!よく見つけてくれた!」
私から時計を受け取り、満足そうにそれを腕にはめる。
「いやぁ、やっぱり腕に着けていないとダメたなぁ~ロレックスは♪」
時計が戻ってきて大喜びをしている総理とは反対に、私の隣にいた幹事長は少し残念そうにボソリと呟く。
「お手柄だったねマナミちゃん。
……しかし、面白くない……」
……面白くない……
確かに、今、高級時計を着けて浮かれている総理の姿を見ていると、なんだか少し腹立たしくもある。
たった今、消費税増税を『たかだか10パーセント』などと言い放った総理。
200万円の高級時計を、これ見よがしに着けて来る総理。
あなたには、一円二円の安さの為に新聞のチラシを熟読して、毎日の買い物を工夫している一般家庭の主婦の気持ちが分かっているのだろうか?
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