「国民の期待を一身に浴びてようやく政権交代を成就した民民党ではありましたが、しかし、大層なマニフェストとは裏腹にあなた達民民党は、結局なにも出来なかった!
民民党に変わり、総理はあなたで三人目ですが……何もやらなかった最初の総理。
余計な所に口出しをして、震災復興を停滞させた二番目の総理。
もう、何をしようが民民党は国民の信頼を完全に失っている!
選挙に勝つなど、夢のまた夢ですよ!」
「ううっ……」
「なまじ的を得ているだけに、総理には言い返す言葉が見つからなかった。」
政党批判にたじろぐ総理の様子を見た事務次官は、このタイミングとばかりに話の核心に入る。
「そこで、消費税増税です!」
「えっ?……なぜそうなるんだ?」
「増税は難しい……ともすれば国民を敵に回すようなこの政策は、どの政党だってやりたくは無い。
しかし、もしもそれを鉄のような意志と覚悟でやり遂げる総理大臣がいたとすれば……その時には批判を受けるかもしれないが、十年後、二十年後……
財政再建の為に政治生命を懸け、勇気ある決断をした総理大臣として、語り継がれる事になるでしょう!
あなたが、社会科の教科書に載るようになるのも、夢では無いかもしれませんよ!」
「社会科の教科書……」
「そうです!
あの『坂本龍馬』や『吉田茂』のように、あなたも社会科の教科書に載るのですよ!」
財務省お得意の、政治家を思いのままに操る話術……
政権政党の経験の浅い民民党の総理を丸め込む事など、事務次官にとっては赤子の手をひねるより容易い事であった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
.



