東條くんのとある1日



コンクリートの壁にとん、と背中を預けて大きく息を吐き出す。


「はあああああー。」



なにやってんだろ、私。



嬉しかったくせに。学校から走ってきてくれたのかなって思ったら、嬉しくてたまらなかったくせに。

なんで逃げてんの自分。情けなくて嫌になる。



嫉妬ばっかりで汚い気持ちがぐるぐるしてるくせに、いざ東條くんに会うのが怖いなんて。


でも、だって。


会いたかった。
会いたくなかった。


どうせならこの世にあんなに素敵なひとがいるなんて知らずに人生を終えたかった。

東條くんのことなんて好きになりたくなかった。





「見つけた」

「ひ、」



呼吸がひゅっと変な音をたてた。髪もぼさぼさでネクタイをぐっと緩めながら1歩、また近付いて私を睨む。

逃げようにも後ろはコンクリートの壁。


さっきの数倍殺気立ったオーラを発しながら低く唸るように呟いた。







「なんで逃げんの」





口をへの字にして私の肩にすとんと顎をのせる。

怒ってるのかと思っていた。けれど違った。彼は、傷ついていた。