「じゃー今日はこれで終わります。起立!」


礼とありがとうございましたを機械的にこなして、私はスクールバックを引っ付かんだ。

そこに急いで手当たり次第物を詰め込んで駆け足で教室を出る。


ちらっと教室を振り替えれば東條くんは男の子に囲まれてだるそうに話していた。

私は帰宅部で、東條くんも帰宅部で。方向も一緒だから毎日一緒に帰っていたけど、今日はとてもじゃないけど帰れない。

東條くんの前でふつうにしてられる自信がない。



家庭科のあとのカップケーキ騒動はクラスみんなの話題になっていて、そんなもの聞きたくなかった。



「わー。東條くんだ!かっこいー」

「あれでしょ?今日女子の渡したカップケーキ超優しく断ったって」

「え!うそ!どんな心境の変化よそれっ」

「それってもしかしてその子が好きなんじゃ…」




廊下で騒ぐ他のクラスの子の声にまた泣きたくなった。


“もしかしてその子が好きなんじゃ…”


東條くん、普段なら「いらない」って言うだけだから。あんなに優しく断ったから騒がれてる。

あの子のこと、好きなのかな。知らなかったな。でもあの子は確かに可愛かったし、すっごく東條くんが好きみたいだった。


羨ましい。心の底からそう思った。