中野はフウッと軽くため息をついてから、ニッと私を見て笑った。 「はよ、行け」 泣いている私の背中をトンッと押す。 「……うん。ごめんね…」 「謝るな、アホ」 「うん」 ――次の瞬間に駆け出した。 もう、後の事を考える余裕すらなかった。 迷ったり、泣いたり、笑ったり、妬いたり、怒ったり。 伝えたい。 全ての気持ちはあんたに向いていると。 司が、好きで、堪らない。 奪ってでも私のものにしたい。 誰にも遠慮なんて、もうしない。 やっと、何かが吹っ切れたように、そう思えた。