彼女を押す手に徐々に力が入る。
離してくれ。
もう、限界だ。

「……っ…!ひどいわ。私とは、遊びだったの?」

ああ。そうだよ。気持ちなんてなかった。

「いや、そんな訳じゃないよ」

「あのとき、裕香だけだって言ったじゃない」

そんなの、口から出任せに決まってるだろ。

「そうだよ、裕香ちゃんだけだって」

「身体だけが目当てだったの?誕生日に五分も時間が取れないの?」


だから。
明日香ちゃんとのデートなんだって。

「そんな訳ないじゃない。君のことはちゃんと好きだって」


「嘘つき!!」


パチーン!!


いてぇぇ!

俺は頬を押さえて彼女を見た。
懸命に絶やさなかった笑みはもう顔に欠片も残ってはいないだろう。