ユウに連れられてカレンの入院している病院に行くと、そこにはカレンの母親のサツキさんと父親のコウジさんがいた。

「ケンくん…」

サツキさんは焦燥しきった顔で僕を迎え入れてくれた。
ユウはサツキさんに紙袋を渡しながら、眠っているのか、目を瞑ったまま動かないカレンの傍に近寄った。

「具合どう?」

「……」

コウジさんは、難しい顔で首を横に振った。
あまりよくない、ということなのだろうか…。
僕は不安になりながら、カレンの顔を見つめていた。

元々、あまり顔色はいい方じゃなかった。
ただ、今はまるで生気のない顔をしている。

「カレン…」

「昨日の夜遅くに、急に倒れてね…」

サツキさんが真っ赤な目を伏せながら呟いた。
ずっと隠していた。
カレンの病気は、よくなってなんかいなかった。

「心臓の鼓動がとても弱くなっていて、不規則なんですって。冬は越せないかもって…」

頭を叩かれたようなそんな衝撃が僕を襲った。
一番辛いのはカレンや家族だろうに…僕はどうしたらいいかわからずに、顔を伏せる事しかできなかった。


「…ケン…?」

「カレン!」

か細い声に、いつもは大声なんて出さないコウジさんが慌てた様子で駆け寄った。
ナースコールを押しながら、カレンの手をそっと握る。

「ケンくんなら、ちゃんと来てくれてるよ」

優しくそういわれ、カレンは視線をさまよわせた。
僕の視線と、カレンの視線が絡みつく。

「…ばれちゃった」

そう言って微笑むカレンは、僕の良く知っているカレンで。
僕は泣きそうになりながらカレンの傍に立っていることしか出来なかった。

「どうして隠してたの?」

思わず、責めるような口調になる。
カレンは困った様に笑うと、ふっと遠くを見るように天井を見上げた。

「だって、ケン…もし知ってたら、私のこと嫌いでも、好きって言ったでしょ…」

「そんなこと…」

嫌いなわけなんてない。
カレンは子供の頃から、僕にとって掛け替えのない存在で。
それがどんな形になっても、変わるわけなんてなくて。

「ごめんね」

弱々しく笑うカレンは、17歳の女の子には見えなかった。
どこか大人びていて、カレンはずっと、一人で恐怖と戦っていたんだろうか。