今はこうして元気に歩いているカレンだけど、小さい頃は身体が弱くて、よく倒れていた。
体育なんてもってのほかで、何でもないような日に急に倒れたりなんてことはよくあった。

それも大人になってきたからか、最近はとても調子がよさそうで、こうして学校帰りにあちこち寄り道できるまでになった。
 ただ、未だに体育はご法度らしく、よく見学している姿は見るけど。

「あーあ、今年も夏、終わりだなぁ」

カレンが残念そうに呟く。
確かに、北海道の夏は短い。
一年のうち、暖かいなって僕が思えるのは本当に少ししかない。

「そのうち雪が降るね」

カレンが空を見上げながら、小さく続ける。
北海道に住んでいて一つだけいいなと思えるのは、ホワイトクリスマスが見れることくらいだろうか。
僕がそういうと、カレンは笑った。

「ね、今年もイルミネーション行こうよ」

「えー、混むし」

僕が嫌そうな顔をしていたのが気に食わないのか、カレンは頬を膨らませて立ち止まった。

「行きたいー」

「わかったよ…」

こういうところは、小さいところと全く変わってない。
でも、カレンは自分のやりたいことを出来るようになったのは本当に最近のことなわけで。
僕が叶えてあげられることなら、出来るだけ叶えてあげたかった。


 もうすぐカレンの家が見えてくる。
そんな時、カレンが急に立ち止まった。

「ねぇ」

いつになく真剣な瞳で、僕を真っ直ぐに見つめてくる。

「ケン、私、ケンのこと大好きだよ」

「何急に…」

言いかけて、はっとする。
カレンの瞳は本当に真剣で、僕が今まで知っているカレンとは少し違うような気がしたから。

「ケンは…?」

珍しく「ケンちゃん」と呼ばないカレンに、僕は何度か瞬きをした。

「僕は…」

逡巡する。
何て答えればいいのかわからない。
カレンのことは、もちろん大好きだった。
幼馴染だから、というのではなくて。

ずっと傍で見てきたのは僕だったし、恥かしい話、僕が守るんだとか子供の頃は良く思っていた。

「僕も、好きだけど…」

「そう、よかった…」

安堵したように微笑むカレンの顔が、まるで色をなくしていて。
僕は何か胸騒ぎを覚えてカレンの頬に触れた。

「カレン、熱あるんじゃ…」

「大丈夫!ちょっと…寒かったから…」

カレンはそういうと、僕の手をそっと下ろした。
触れられたカレンの手は、とても冷たかった。