僕の話を聞いている間、セリちゃんはずっと無言だった。
呆れてしまったかもしれない。
それより、怒ってしまったかも。
僕はずっとセリちゃんを騙していたわけだし、カレンのことだって、ずっと黙っていた。
「…ひどいね」
予想通りの言葉がセリちゃんの唇から漏れる。
僕は俯いたまま、何もいえない。
「どうして、ケンくんはカレンさんの気持ちわかってあげられなかったの」
セリちゃんが吐き出した言葉に、僕は思わず顔を上げた。
セリちゃんは目に涙を溜めていた。
大きな瞳を見開いて、僕の瞳を真っ直ぐに見つめてくる。
どうして女の子は、こういう時は強いんだろう。
「…気持ちって…そこなの、セリちゃんが気にするところ。僕はずっと騙してたんだよ？」
「…私を騙してたことなんてどうでもいい…。私…ずっとケンくんのこと好きだったんだよ？ケンくんが、まだカレンさんのこと好きなことくらい…見てたらわかる」
「じゃあ何が言いたいんだよ」
僕はイラついたように思わず声を荒げた。
セリちゃんはひるむ様子もなく続ける。
「私が言いたいのは…どうしてそんなにお互い想っているのに、中途半端なお別れの仕方してきちゃうのってことだよ！逃げたいなら…私でいいなら、私は嬉しいよ…。だけど、そうやっていつも自分を責めて、カレンさんのこと考えて…ちゃんと向き合いなよ」
セリちゃんは淡々と言うと、乱暴に袖口で涙を拭うと立ち上がった。
「行こう」
有無を言わせぬ口調で、セリちゃんは言った。
僕の手を乱暴に取ると、そのままぐいぐいと引っ張っていく。
「ちょっと…」
「言い訳も文句も聞きたくない。カレンさんにちゃんと会って、そして自分が本当はどうしたいのか考えなよ」
セリちゃんは、もう泣いていなかった。
女の子は、強い。
だけど、そう思うのは…結局は僕が現実から目を背けて、ぬるま湯の中に浸かっていたから。
セリちゃんに言われて、僕は改めて気がつく。
僕はカレンが好き。
噛み締めるように心の中で呟く。
今更わかっても、もうカレンにもセリちゃんにも許してもらえないかもしれない。
それでも、セリちゃんに腕を引かれながら…
僕はもう一度カレンに会おうと決めた。
