それからセリちゃんとは、個人的に会うようになった。
その間もカレンのことは頭から離れなかったけど、それでもセリちゃんと二人で会うのは楽しかった。
 どこか、意固地になっていたのかもしれない。
腹も立てていたのかもしれない。
カレンの役に立ちたかったのに、カレンに突き放されたことに。
最低だ、と思う反面、僕はセリちゃんとの居心地のいい関係に慣れ始めていた。

「お待たせー」

「さすがに日曜は街も混むなぁ」

他愛のない会話。
僕はゆったりとした気分で街を歩く。
 程なく夕暮れが訪れて、綺麗に飾り付けられたイルミネーションが街を彩る時間だった。
一緒に見ようと約束した人は、隣にはいない。

「ケンくん」

不意に声を掛けられて、僕は立ち止まる。
セリちゃんと向かい合う形で見詰め合うと、セリちゃんは俯いていた。

「あのね…」

セリちゃんは何度か口を開きかけ、意を決した様に僕の瞳を見つめ返してきた。
真剣な表情に、僕は射抜かれたように立ちすくむ。

「私と…、付き合わない?」

途端にセリちゃんの頬に赤みがさしたのは、夕日のせいだけじゃないと思う。
僕はまさかの展開に、どう答えていいかわからなかった。

「…え?」

思わず飛び出た言葉は、そんなものだった。

「えっと、え?」

「だ、だから…私、ケンくんのことが好きだから…」

セリちゃんはそういうと、また俯いた。

「…ケンくんが、彼女と別れたばっかりだって聞いて…。私、学園祭とかでテツからケンくんのこと聞いてて…っていうか、一目ぼれで…可愛い彼女がいるからって聞いてたんだけど…別れたってテツがいってたから!」

「あ…」

突然のことに、頭が全くついてきていなかった。
学園祭のときに、そういえばテツが女の子と歩いていたような気がしないでもない。
でも僕はカレンと大抵一緒にいたし、あんまりそういうことに興味もないし。

「その…僕今は…」

しどろもどろになる。
セリちゃんは、泣きそうな顔をしながら僕を見つめている。

「今は…一番じゃなくてもいいの。付き合ってみてダメならそれでいいから…」

懇願されて、僕は結局断りきれなかった。
カレンのことが今でも好きだった。
だけど、カレンを忘れることが出来ないなら…誰かに忘れさせて欲しかった。

「…いいよ」

そう言った僕の言葉に、セリちゃんは本当に嬉しそうに。
ありがとう、と言った。