私の名前は石原春姫(あつき)。
現在、高校一年生。

「あつき、話聞いてる?」

そう言ったのは私の幼なじみの白河亮太(りょうた)。
私と同じ高校に通い、同じクラスに所属している。

私は小さい頃から、近所に住んでいる彼に片思いをしている。
そんな私の気持ちに気づきもしない彼ときたら‥‥‥。

「佐藤が俺の方を振り返って、『名前なんていうの?』って言ったんだよぉ!そんときの笑顔が超かっこよくてさー!」

ああそう、よかったね。
貴様を蝋人形にしてやろうか!

「それで一目惚れしたんでしょ?もう何回も聞いたって。」
「だって何回思い出してもかっけーんだよ‥‥」

そう言って彼は遠くを見つめるような目をした。
また佐藤くんのことを考えているのだろう。

亮太は同じクラスの男子、佐藤貴文(たかふみ)に恋をしている。
佐藤くんは背も高く明るい性格で、その上顔もいいので誰からも人気がある。
だから亮太が恋をしてしまうのも仕方ない‥‥‥‥わけがない‼

「亮太、そろそろ妄想旅行から帰っておいで。」
「帰りの交通費ないから無理〜」
「じゃあ私が家に帰ろうかな。」
「冗談だって!ごめんごめん!」

最近、学校から帰宅すると、亮太の家で恋の相談を受けるのが日課になっている。
お互い特に部活をしているわけでもないので時間はあるのだが、私としてはこんなことに時間を費やしたくない。
まぁ、亮太と一緒にいられるのは嬉しいけど‥‥。