幼なじみの彼と、久しぶりに一緒に帰る。
幼なじみで好きな人。
だから嬉しくて笑顔が隠せない!
「……あの、さ。」
彼の声に振り向くと、彼の様子が何だかおかしい。
緊張しているかのようにそわそわと落ち着きがなく、少し顔も赤いみたいだ。
「どうかした?」
「あー‥‥ちょっと、話あって‥‥」
沈黙することで次の言葉を促した。
彼は困ったように頭を掻いている。
今では耳まで赤くなっている。
何だろう何だろう何だろう!
そんな顔されたら期待しちゃうよ!
「俺さ、あの、好きな人‥‥できたんだ。」
‥‥見事に期待を裏切られた。
恐らく、というかかなりの高確率でその相手は私じゃない‼
「そっか、よかったね。」
あー泣きたい。
「おう。‥‥んで、色々と相談してもいいかな?」
あー!死にたい!
「いいけど、相手は誰なの?」
「‥‥お前、絶対ひくよ‥‥」
真っ赤な顔で少し泣きそうに彼は言った。
ひくってどういうこと?
まさか人妻とか、アイドルとか、漫画の中のキャラクターとか⁉
「ひかないから、大丈夫。」
「うん‥‥。」
彼は決意したように一度唇をギュッと引き締め、そして口を開いた。
「佐藤なんだ‥‥うちのクラスの。」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」
私は一瞬のうちに思い当たる佐藤を探した。
しかし1人しか思い浮かばない。
「‥‥私の知ってる佐藤は、男なんだけど。」
「俺が言ってる佐藤も、男だよ‥‥。」