童話に出てくる様な可愛らしい店内はチョコレートの甘い香りが漂っていた。


どうやら今回の新作ケーキはチョコレートを題材にしているようだ。


ショーケースには所狭しとチョコレートケーキが鎮座している。


しかし、なぜバレンタインでもないのにチョコレートなのだろうか。


ふと今朝の出来事を思い出した。


――そういえば、彼からもチョコレートの香りがしたな…。


どのケーキを食べようか迷っているとゆきが私の服を引っ張った。


何事だろうかと思って彼女を見ると一点を見つめていた。


「瑞穂、あの人ここのパティシエさんかなぁ??」


ゆきの視線を辿ると、確かにパティシエらしい人物がこちらに背を向けて商品棚を眺めていた。