女の人は草履を脱ぐと座敷に上がり、私達の席に腰を下ろした。
「お初にお目にかかります、菊田華恵<キクタ ハナエ>と申します。この店の料理を気に入って下さったようで、なによりです。」
そう言って微笑む彼女は華やかさの中に奥ゆかしさもあった。
「あっ、えっと、私は新井瑞穂です。ここのお店のお料理とても美味しいです。」
緊張して、しどろもどろになりつつも何とか言葉にした。
「可愛らしい方ね。」
今度は匠さんに向かって言葉をかける華恵さん。
「そうですね。」
お世辞でも2人から可愛らしいと言われると照れてしまい、俯く。

