するとすぐに返事が来た。
「来月の10日です。」
驚いた。
残り1ヶ月で新しいケーキを作るには時間が短いと思う。
私とこうして食事をしている場合ではないのではないのだろうか。
実際、ケーキを1から作り上げるのにどのくらいの時間が必要なのかは、分からない。
けれど、ケーキだろうと絵や曲だろうと新しい物を作るのに1ヶ月は短いのではないだろうか。
「こちら女将からです。」
そう考えたところで、先程とは違う女性が私達それぞれの前にお猪口を置き、テーブルの中央には徳利を置いた。
「失礼いたします。」
彼女が去った後に匠さんが徳利を手に取り、私にお酌をしてくれた。
「どうぞ。ここは料理もそうですが、お酒も美味しいですよ。」
そう言って注がれたお酒は無色透明で良い香りを放っていた。
「ありがとうございます。では私も相模さんに。」
今度は私が相模さんにお酌を返す。

