「今度のコンクールの課題はチョコレートケーキなんです。」


そう言われてクラウンの新作ケーキが全てチョコレートケーキだったことを思い出した。


「新作ケーキがチョコレートケーキだったのはそのためだったんですね。」


話ている間も匠さんはボウルや卵などの材料をどんどん取り出していく。


「はい。それもあるのですが…。」


匠さんはここで言い淀む。


不思議に思い、匠さんの手元から顔へと視線を送ると真っ直ぐにこちらを見つめていた。




―――ドキン―――



射るような真っ直ぐな瞳に心臓が抉られるような感覚に陥る。


目が外せない…。


何とも言えない感情が全身に一瞬にして駆け巡って行く。