「お前が誘ってくるなんて珍しいな」


その日の昼、2ヶ月ぶりに幼馴染の雄太を呼び出し男二人、六本木にある鉄板焼にいる


「そうか…?」



「どうよ、新婚生活は」



コイツは沙耶以上に俺の内情を知っている唯一の友人だ



「昨日、出て行ったよ」



小さく笑う俺を雄太は驚き見た



「はぁ?何で?喧嘩でもした?」



「喧嘩にもならねーよ」


俺は昨日あった事を全て雄太に話した


沙耶のこと…


俺の中にある不安と苛立ちのこと…



「賢治って頭良いのに残念だよね…」


雄太は目の前の肉を食いながら笑っている


残念って…


「は?意味分かんないんだけど」


眉をしかめると雄太は納得したように箸を置いた



「うん、賢治には分からないと思う

賢治って成瀬の会社が欲しくて彼女と結婚決めたんだよね?

だったら別に彼女と別れて他の手考えればいいじゃん

彼女に固執する理由なんて無いと思うけど

でも…

もし賢治が成瀬のこと関係無く、ただ彼女に居て欲しいって思うなら簡単に手放しちゃ駄目だよ」


その言葉に思わず顔を上げると雄太は楽しそうにメニューを見ながら店員に追加の注文をしていた