「賢治さんもシャワー浴びますか?」


髪の毛を拭きながらバスルームから出てきた沙耶をチラッと見てタバコに火をつける



既に日付は今日を昨日にしようしている


そう言えば9時に帰るってメールしたんだっけ…


他人事のように華にメールを打った事を思い出す



「いや、もう帰るよ」


ネクタイを締め直し帰ろうとする俺に後ろから沙耶が抱きついてきた



「賢治さんにとって華さんはただの駒でしかないんですよね?」




いつか言った自分の言葉を思い出す…



『あの女は成瀬の会社を買収する為の捨て駒だ』って…



振り返ると沙耶は真っ直ぐな瞳で俺を見上げる



「…」



何も言えず俺はそのまま部屋を出た