沙耶と入った店は、いつも会うときに使っていた赤坂のホテルの最上階にあるバーだった


結婚してからは沙耶とプライベートで会う機会もなく、このバーに来るのも久し振りだった




「話しがあるんだろ?何?」


「賢治さんとここに来るの久し振りですね」


沙耶は注文したモスコミュールを飲みながら、なかなか本題に入らない



「用が無いなら帰ってもいい?疲れてるんだけど」




自分の口から発せられた低く冷たい一言に自分自身少し驚く




「…そう言えばアメリカに発つ前、華さんとお会いしましたよ」



席を立ち上がろうとする俺に沙耶は静かに笑いグラスに口をつけた



「…」


「いけませんでした?」




沙耶の一言に静かに答える



「別に…」