「失礼します」


数分後、黒服に案内され俺達の卓に来た成瀬が好きな女はストレートの黒髪で大きな目と笑顔が印象的だが何処にでもいる普通の女だった




「初めまして、華です」



俺の隣に座った、その女は名刺を差し出した




「ああ…」




俺は名刺を見る事なくテーブルに置き友人と話し続けた



華は口を挟むわけでも無く笑顔で灰皿を変えたり酒を作っている



「今日さ、コイツの社長就任パーティーだったんだよね」


見かねた友人が煽るように華へ話し掛ける




すると席に着いていた周りの女達は目の色を変え擦り寄ってくる


そんな、いつもの光景に俺は他人事のように華の作った酒を飲む




「おめでとうございます

背負うものが大きくなると、これからは今以上にお忙しくなりますね」



えっ…



俺はその一言に隣を見た




そんな事を言う女は今まで俺の周りには居ない





真っ直ぐ前を向き笑顔で酒を作る華の姿を初めてちゃんと見た気がする






一瞬、華を包む空気が輝いて見えた気がした