「取り合えず医務室行こう」


その男子社員は華の背中に手を添え歩き始めた



「寛…チョット待って」


華は振り返り小走りで俺の前に来た



「本当に申し訳ございませんでした

良かったらこれ食べてください」


怯えたように泣き出しそうな華は自分のお弁当袋を震えながら差し出し食堂を後にした




遠ざかる2人の姿を見ながら俺は何故か胸の奥が苦しくなった



「…長、社長」



沙耶の声で我に返ると野次馬の片隅で散らかった食器を片付ける掃除のおばちゃんがいた




「シャツ汚れたから戻るわ」


白のYシャツの袖口にはランチのソースが飛び散っていた




「ねーアイツといた男子社員、誰?」



数分前に乗ったエレベーターに再び乗り沙耶に聞いた




「えっ?…ああ

山口華のトレーナーをしている企画営業の片山寛人です」




俺は何も言わずそのままエレベーターを降りた