「キャー!」

 今度ははっきりと人の声だった。クップはすぐに助けを求める奇声だと思い、走って行った。

 クップがかけつけると、背中を向けた男とその先に座りこんで恐怖で言葉が出ない少女がいた。

「いや、若いっていいね」

 背中を向けた男が少女に言った。

「……」

「叫んでも誰もこんなところに、こないよ」

「誰もこない? ここにいるよ」

 と、クップは言った。

 男は振り返った。頭髪も薄く、年齢は五十代前後で、口は薄っすらとヨダレで濡れていた。