「キス、しよ?沙耶。」

「っ..」

おかしい。

こんなの絶対おかしい。

私、こんな誰かにときめくようなキャラじゃなかったはずなのに。

「沙耶と、キスしたい。」

「〜〜〜っ」

1つ、学んだ。

私は、彼に"沙耶"と呼ばれると、何も言えなくなるみたいだ。

相当重症なのかもね。

「沙耶、大好き。」

あぁ、もう。

私の負け、かな。

「私っ..も......」

「可愛い、沙耶。」

こんな私を可愛いと言ってくれる。

そんな彼がどうしようもなく好き。

放課後の教室。

私と玉木の2人きり。

オレンジ色の光が作る2つの影が、静かに重なった。