「沙耶..?」

あぁ、もう。

そんな潤んだ瞳で見つめられたら、観念するしかない。

普通、潤んだ瞳は女の子の武器だと思うんだけど。

彼のそれは効果抜群。

「沙耶の好きな人は、誰?」

「......玉木だよ。」

ポツリ、と聞こえるか聞こえないかの声でそう言った。

瞬間。

ぎゅっ。

私は再び玉木の腕の中。

「まじで?」

「..まじです。」

「夢じゃない?」

「夢かもね。」

「..意地悪。」

こんな会話、日常茶飯事だったのに。

今は、なんだか特別に感じる。