部屋に上がって行く澪を見送った後も、私はなかなかその場を動けずにいた。
澪が視界から消えてホッとしたせいで急に足がすくんで立ち上がることができない…
さてどうしようか。
誰か帰って来るのを待つしかないかな…
こういう時でも冷静に頭が回るのは父さんの教育の賜物だろう。
…―――ガチャ…
扉の開く音がして、誰かがリビングへと歩いて来る。
トタトタと軽い足音がピタリと止まって、覗きこむようにした顔が見えた。
「何やってるわけ…?」
天使のような顔は怪訝そうな表情を浮かべている。
「悠斗っ。
助かりました…
ちょっとこっちに来てくれませんか?」
助けをこう私をちらりと見ると悠斗はにこりと笑う。
「や・だ…」
コイツ…
ムカつく…

