父さんは幼い私の嘘を最初は信じてくれなかったけど。
毎日、毎日何もいない場所を見ては微笑んだり、話しかけたりする私を見て。
段々と母さんがそばにいるって思い込むようになっていった。
『真琴??母さんはどこにいる??』
『母さんは何て言ってる??』
聞かれるたびに、私は作り笑いを浮かべて答えた。
『母さんは父さんの横にいるよ、また泣いてる。
ご飯をちゃんと食べなさいって』
『父さんを愛してる、そばにいるから泣かないでって母さんは言ってるよ』
母さんの話しを聞くと、きまって父さんは愛おしむようにくすり指にはまった結婚指輪を撫でた。
ねぇ、父さん。
私は母さんを見ることは本当はできないけど。
母さんならこう言うだろうってわかるんだ……
だからお願い。
もう一度笑って。

