澪の一言に頭の中が“?”でいっぱいになった。
「あいつ?」
「……女優でさ、いただろ葉月未音だっけ?」
葉月未音は母さんの芸名だった。
母さんの芸名を聞いて困惑して黙っている私を気にも止めず、なお澪は話しを続ける。
「……あいつ見てると虫酸が走る。
死んで清々したよ」
胸の奥のほうから今まで感じたことのないくらいの強い怒りを感じた。
死んで清々した?
家族の気持ちも知らないくせに…
私の父さんは母さんが死んでからしばらくは抜け殻みたいになってた。
小さかった私は父さんまでいなくなってしまうんじゃないかって不安で堪らなくて……
父さんに嘘をついたんだ。
『私は母さんが見えるよ、父さんを心配して毎日泣いてる』
母さんの霊が見えるようなそぶりを見せて父さんに少しでも生きる気力を湧かせたかった。
今にして思えばあれは私の初めての演じるという行為だった気がする。
決して失敗することの出来ない悲しいものだった…

