今でもあの時のことを思い出すと、自分のことを殺してしまいたくなる。

後悔が津波のように押し寄せてくる。

唯人はきっとわたしのことをうらんでいる。

だから、わたしは幸せになってはいけないんだ。

それは呪い。自分でかけたわたしを縛る呪いだ。

わたしの心にグシャグシャに絡みついて固く閉ざしてしまっている。

今日もわたしは淡々と授業をこなして日々を消化して行くのだろう。

わたしは朝の授業の準備をしてデスクから立ち上がる。

教室に向かおうと言う時後ろから声をかけられた。

深草先生がわたしに校長室に行くように言ってきた。

明日見えるはずの先生が今挨拶をしにきているから、ついでに会って来いと。

気が進まないかったが、明日会うのも今日会うのも変わらない。

ホームルームが始まるまでにはまだ少し時間があったので、わたしは校長室へと足を向けた。

ノックをし返事を待ってから横開きのドアを開けて校長室に入る。

丁度校長先生との話を終えた若い先生がこちらに踵を返したところだった。

わたしは簡単に自己紹介しながら頭を下げる。

「初めまして、明日からあなたの指導をします小野です。至らないこともあるかもしれませんがよろしくお願いします」

するとその先生は少し間を置いてから、わたしと同じように頭を下げた。

「志田です。志田唯人と申します。右も左もわからない新参者ですがご指導のほどよろしくお願いします!真衣子先生」

わたしは思わず顔を挙げる。

屈託なく笑う懐かしい笑顔。

枯れたはずの涙がスッと眼から零れ落ちた。


《end》