気がつくと人は減っていて、私はあわてて離れた。
「…ったく。いつまで引っ付いてんだか。そんなに俺から離れたくないのか」
にやにやしながら聞いてくる健介に、こっちも笑いながら言い返す。
「んなわけないでしょ。誰があんたみたいな」
「なっ……!」
ふふん、私の勝ちだ。
なんか、健介の前だとありのままの自分をさらけだせれる。
「そこのお二人さん。ちょいとごめんよ。」
扉の前にいた私達の間を通ろうとするおばあさん。
「あ…すみません」
「いいのよ。仲の良いカップルねぇ〜。昔の人を思い出すわぁ」
おばあさんは目を細めて笑ってから、電車を降りていった。
………ちょっと、恥ずかしい。
チラッと健介を見るとそっぽを向いて頭をかいてる。
「あ……じゃあな」
「うんっ」
丁度健介の降りる駅になって、健介は去っていった。

