山本君を呼んだ男の子は、こちらに向かって走ってくる。
太陽の陽が反射して、眩しくて、目を瞑る。
「恭介、久しぶり」
「久しぶりー」
目を開くと、目の前にいたのは、いつも電車で見かけるあの人だった。
「えっ……」
「…?勇司の彼女?」
「違います!」
即答した私を山本君は悲しそうな目で見る。
なんで?
「友達…です」
「そっか!俺、田辺恭介!よろしく」
普段見たことのない八重歯を覗かせて笑う。
……ドキドキしちゃうよ。
「豊川、優姫です。」
差し出された手を握るのに、すごく緊張してしまった。
「恭介でいいから、優姫っ」
「う、うん…」
も、もう、心がもたない……
「豊川、試合始まるから行くわ。あっちら辺で見てて」
「あ、うんっ」
2人は走ってグラウンドに向かう。
私は山本君が教えてくれた応援席に行く。

