海の花は雪

「…戻りましょうか?」

「うん…やっぱり僕じゃダメだったね…ありがとうね…」

深谷君は、首を小さく横にふった。

この部屋を出て行く前にもう一度ふり返ると、海底の世界を目に焼き付けた。





「はぁ〜良かった」

思わず口をついて出ていた。

無事、書庫に戻れた安堵に、その場にしゃがみ込んでしまうほどだ。

「いや〜楽しかったね〜♪」

悪びれた様子もなく、山形さんがニコニコしている…

腕時計を見ると、書庫を出てから10分ほどが経っていた。が、書庫の時計は、たっぷり1時間後を指していた。

わぉ…

「…出ましょうか」

深谷君がスタスタと書庫を出て行く。

その後ろについて図書館を出ると、山形さんが愛想良く司書の先生に、お礼を言って「また来ます」…などと付け加えていた。