海の花は雪

「大丈夫、大丈夫♪任せて」

山形さんが無邪気に笑うと、胸ポケットから手帳を取り出した。

「ちゃんと、外へ出る魔法の呪文を控えてきたからね〜」

山形さんは自分の隣に来ると、白い壁を手の平で叩いた。

「そんなものが、あるんですか?」

「あるとも、もちろんさ〜僕を誰だと思ってるの?」

自信満々に、深谷君と自分に向かってそう言った。

「…本には、書いてなかった…」

深谷君がポツリと呟く…

「うん、書かなかったよ〜?でもちゃんとあるんだよね、呪文は」

「…」

深谷君と目を合わせる…いったい、この人物は誰なんだろう…?

「じゃ、帰るとしようか?名残おしいけど…」

山形さんはペラペラと手帳をめくると、あるページで手を止め…壁の方に向き直ると、声に出して呪文を唱えた。

「゛パ・ソル・ダイエ・レネフ・ラルス!゛」

…静寂の時が流れた…