車から降りると、二階建ての建物に≪●▲道場≫と書かれた大きな看板が目に入った。
どうやら道場が上で、下が事務所のようだ。
私とママは道場に繋がる外の階段を上り、透明なガラスで出来ているドアを引いた。

中ではサンドバックにパンチしている人、スパーリング(試合形式の練習)をしている人など、色々な人が居た。

・・・が、みんな男。女の人の姿は見えない。

ぼーっと見つめていると、後ろから声がした。

「見学でしょうか?」

大きな身体からは想像もできないほど丁寧な話し方だ。

『見学と言うか・・・入会なんですけど・・・』

ママが言う。

え????????今何て言った???
誰もやるなんて言ってないし!!

「あっ、そうでしたか!ではこちらへどうぞ!」

話を聞くと、私達がきた時にやっていたのはキックボクシングで、時間によって柔術や総合格闘技もやるらしい。
そして今、私達に色々なシステムを教えてくれているのは道場の代表券自分も選手兼コーチという、三速のわらじを履いた石塚さん。
私が色々なことを考えているうちにママと石塚さんは話が進んでいるようだ。


・・・やはり、気付くと入会に必要な書類を書いていた。
話は簡単に進み、明日から此処に通う事になった。
学校の帰りに、部活に来るような感じで此処に来るのだ。

とりあえず私はキックボクシングを始める事にした。
他のがやりたくなったらまたその時、考えればいいし。


このとき私は、まだ「めんどくさい・・・」と感じていた。

でも・・・

私がこんなに一つの物にハマれるなんて思ってもいなかった。

出会いって、不思議・・・・。