ちょいとわっちの話を、聞いてもらいたい。これは、代々言い伝えられておる昔話。


吉原遊郭ーーー

江戸幕府によって公認された遊郭でありんす。
これは噂じゃが、息抜きにちょくちょく、あの将軍様も訪れていたそうな。
男は女を選び、選ばれた女は芝居を共に男とする。
一夜限りの小芝居じゃ。
だがな、そんな吉原に、一輪の花の如く美しい女がいた。
その名を"桜花太夫"。
吉原きっての花魁でござんした。
旗本共はもちろんのこと、遊女達にも人気があったんじゃ。
その、気前の明るさで、吉原全体の雰囲気も和む程であったそうじゃ。
その話は幕府まで届き、太夫を一目見た将軍様は桜花太夫をたいそう気に入り、妻に迎えようとまで考えたそうな。

ーーこれで太夫と将軍様は結婚し、めでたく暮らした……となるのは、どこかぞのハッピーエンドの物語だけじゃき。

そういかなかったんじゃ……いや、そうしたくても、無理じゃった。