ーピピピ、ピピピ、ピピピ


目覚ましの音が鳴った。


無機質なその音は、わたしを幸せな夢から辛い現実へ一気につれ戻す。


ひどく緩慢な動作で、部屋を見回した。


冷たいアパートの一室には、当然ながら雅以外誰もいなかった。


ーピピピ、ピピピ、ピピピ


目覚ましが鳴った。


使いはじめて一週間ほどしかたたない目覚ましは、音を止めるのを忘れるのも珍しくない。


ーピピピ、ピピピ、ピ


頭のボタンを押して音を止めた。


生前、『何もしてないのに叩くみたいで嫌だ』と、優しい涼が言っていたのを思い出す。